AI Journal-AIの誕生から生成AIの歴史まとめ-

第1次AIブーム:1950年代〜

概要:AIの歴史における第1次AIブーム(1950年代〜1970年代)は、主にルールベースのシステムやシンボリックAIに関連しています。この時期は、主にNLP(自然言語処理)に関する研究が進展していましたが、コンピュータビジョン(CV)も少しずつ始まっていました。この時期の研究は、主にNLPに集中していましたが、1960年代後半からCVも研究対象として進展し始めました。

第1次AIブーム(1950年代〜1970年代)における自然言語処理(NLP)とコンピュータビジョン(CV)の進展をさらに掘り下げて、以下に一覧表形式でまとめました。主要な技術的進展や研究成果に焦点を当てています。この時期の主な特徴として、NLPが大きく進展し、ルールベースのシステムによる対話型プログラムや文法解析の研究が進みました。また、CVはまだ初期段階でしたが、1960年代後半から1970年代にかけて、画像認識の研究が進み始めました。「AIの冬」により資金が縮小されましたが、その後の技術革新に向けた基盤が築かれました。



第2次AIブーム(1980年代〜1990年代)

第2次AIブーム(1980年代〜1990年代)は、主にエキスパートシステムやニューラルネットワークの再発見、特にバックプロパゲーションアルゴリズムの発展が中心でした。この時期は、NLPとCVの両方で新しい技術が登場し、AI研究が再び注目を集めました。

  • 第2次AIブームは、ルールベースのエキスパートシステムが一時的に商業的に成功しましたが、システムの維持やルールの追加が複雑になるにつれ、ニューラルネットワークの再発見が重要な研究分野に戻りつつありました。
  • コンピュータビジョンは、1980年代後半から1990年代にかけて、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を中心に飛躍的な進展を見せ、手書き文字認識や画像分類が精度向上しました。
  • 自然言語処理は、形態素解析やBag of Words、サポートベクターマシン(SVM)などの技術の発展により、テキスト分類や言語理解の分野で大きな進展がありました。

第2次AIブームの終了は「AIの冬」とも呼ばれる次の停滞期に繋がるものの、ニューラルネットワークの基盤技術が確立され、後の深層学習(ディープラーニング)への道を開きました。



第3次AIブーム(2000年代後半〜現在)

第3次AIブーム(2000年代後半〜現在)は、主にディープラーニングや強化学習の技術が急速に進展し、特にコンピュータビジョン(CV)*と自然言語処理(NLP)*の分野で大きなブレークスルーがありました。大量データの利用やコンピュータの計算能力の向上により、これまで不可能だったタスクが実現されています。第3次AIブームは、ディープラーニング技術の飛躍的な進展によって支えられ、特に画像認識や音声認識、自然言語処理において大きな成果を上げました。

**コンピュータビジョン(CV)**は、Imagenetデータセットの登場やAlexNetなどのCNNによって劇的に進化し、画像認識の精度が向上。

**自然言語処理(NLP)**は、Word2VecやTransformerモデルの登場により、文脈を理解し、生成する能力が大幅に向上しました。特に、GPTやBERTのような大規模言語モデルがNLP分野に革命をもたらしました。

テキストから画像生成のようなマルチモーダルAI技術が進展し、クリエイティブな応用が増加しました。

第3次AIブームは、クラウドの発展や大規模なデータセットの利用、計算リソースの拡大によって支えられており、AI技術は今後さらに広範な応用が見込まれています。

最近の動向(2024年1月以降)

出来事 CVかNLPか
2024年1月ElevenLabs が多言語対応の音声生成ツールをリリースNLP
2024年1月Qdrant.tech がオープンソースのベクトル検索エンジンを発表その他
2024年1月GPT-4.5リリース予測 により、自然言語処理の進展が期待されるNLP
2024年1月OpenAI が新しいAIモデルのAGI向けロードマップを発表その他
2024年1月GPU不足 がAI技術開発に影響を与える懸念その他
2024年2月Anthropic が生成AIチャットボット「Claude」を開発NLP
2024年2月Photoroom がプロダクト写真生成ツールを発表CV
2024年2月Open-sourceモデル と商用モデルの性能差が縮まるその他
2024年2月生成AIの法規制 がEUで進行その他
2024年2月Google Gemini がWorkspaceに統合され、生産性向上に貢献NLP
2024年3月Together.ai がオープンソースのAI開発プラットフォームを公開その他
2024年3月Character.ai が会話型AIキャラクター生成ツールを発表NLP
2024年3月企業向け生成AIエージェント がサプライチェーン自動化に貢献その他
2024年3月ハーバード大学などの研究 で、生成AIの業務効率化が証明NLP
2024年3月EU AI法案 が生成AIの利用規制に関する最終決定その他
2024年4月Hailo.ai がエッジデバイス向けのAIプロセッサーを発表その他
2024年4月AccentureとUN Global Compact が持続可能な開発のための生成AIガイドを発表その他
2024年4月Google が生成AI技術を利用したレース解説を提供NLP
2024年4月Google Imagen 2 がPuma製品の画像生成に使用されるCV
2024年4月多モーダルモデル が動画生成AIの普及を予測その他
2024年5月 Deloitte が生成AIが企業に与える影響を分析し、データ管理とコンプライアンスの課題を強調 その他
2024年5月 AIエージェント が自動で予約やビジネスプロセスを実行できるようになる その他
2024年5月 多国籍企業 が生成AIを使用したデータ分析やサプライチェーン管理を導入 その他
2024年5月 生成AIツールの普及 が中小企業向けに進み、コスト削減が進展 その他
2024年5月 生成AIと倫理規制 の取り組みが拡大、企業のガバナンスが強化 その他
2024年6月 Deloitte が生成AI運用フレームワークに関するレポートを発表 その他
2024年6月 GPU不足 が深刻化し、生成AIのスケール拡大に影響 その他
2024年6月 AIエージェント がサプライチェーン自動化に貢献 その他
2024年6月 生成AIエージェント が法務分野でも利用され始める その他
2024年6月 生成AIツールの商業化 が加速し、大手技術企業が展開 その他
2024年7月 Google がFormula Eのレース解説に生成AIを活用 NLP
2024年7月 多モーダルAIモデル が商業分野で進展 CV
2024年7月 企業向け生成AIエージェント が顧客サポート自動化に利用 その他
2024年7月 OpenAI がGPT-5をリリース予定 NLP
2024年7月 データ品質問題 が生成AIの信頼性に影響 その他
2024年8月 Google Imagen 2 がPuma製品の画像生成に利用 CV
2024年8月 自動化ツール が生成AIと連携し、ビジネスプロセスの効率化が進む その他
2024年8月 生成AIのオープンソース化 により、中小企業が高品質なAIツールを活用 その他
2024年8月 生成AIの規制強化 が世界的に進行 その他
2024年8月 米国企業 が生成AIを利用したデータ解析と意思決定を加速 その他
2024年9月 Microsoft が生成AI運用フレームワーク「GenAIOps」を発表 その他
2024年9月 生成AIによるデジタルメディア進化 が加速 その他
2024年9月 新しい生成AIモデル が製造業やサプライチェーンに影響 その他
2024年9月 生成AIによるエンターテイメント が高度化 NLP
2024年9月 GPU不足 が生成AIの開発に影響 その他


★1950年代のAIの起源から、2023年ころまで

出来事 CVかNLPか
1950年代〜1960年代 - 第1次AIブーム
1950 アラン・チューリングが「チューリングテスト」を提唱。機械が人間のように自然言語を処理できるかを基準とした評価方法の提案。 NLP
1956 ダートマス会議で「人工知能」という用語が初めて使われる。シンボリックAIが中心で、論理的推論や探索アルゴリズムに基づくシステムが研究され始める。 NLP
1957 ノーム・チョムスキーが生成文法を提唱し、文法構造を理論的に解析する手法が自然言語処理の基礎理論となる。この理論は、計算機科学と認知科学に大きな影響を与える。 NLP
1959 アーサー・サミュエルが「自己学習型チェスプログラム」を開発。初期の機械学習アルゴリズムが使用され、ゲームプレイを通じたパターン認識に応用される。 NLP
1960 チャールズ・ローゼンによる「Shakeyロボット」のプロジェクトがスタート。自然言語処理と初期のコンピュータビジョンを統合し、ロボットが環境を認識し、指示を実行できるシステムの開発。 CV & NLP
1963 ジョン・マッカーシーがLISPを開発し、AI研究のための主要なプログラミング言語となる。特にNLPにおける記号処理や再帰的処理に強みがある。 NLP
1965 ロシアのAI研究者アレクサンダー・ベルクマンによる機械翻訳の研究が進む。しかし、当時の技術では文法ルールや辞書ベースの翻訳に限界があり、大規模な成功には至らず。 NLP
1966 ジョゼフ・ワイゼンバウムがELIZAを開発。最初の自然言語対話システムで、簡単な対話をシミュレート。カウンセリングのような会話を行うが、意味理解は限定的。 NLP
1967 コンピュータービジョン分野で、ラリー・ロバーツが「画像認識の幾何学的手法」を発表。これにより、画像の3D構造を2D画像から推定する初期の技術が確立される。 CV
1968 マーヴィン・ミンスキーが「フレーム理論」を提唱。これは知識表現の一形態であり、視覚的認識や意味理解を行う際の基礎となる。CVとNLPの両方に影響を与えるが、主にNLPに応用される。 NLP
1969 シーモア・パパートとマーヴィン・ミンスキーによる「パーセプトロン」の限界を指摘した研究が発表され、ニューラルネットワークの一時的な停滞を引き起こす。 CV & NLP
1970 パトリック・ウィンストンが「視覚認識システム」を開発。これは、基本的な物体認識を行う初期のCVシステムであり、物体の輪郭や形状に基づく分類を行う。 CV
1972 テリー・ウィノグラードがSHRDLUを開発。ブロックの世界という仮想環境で、ユーザーが自然言語で命令を入力し、システムがその内容を理解して操作を実行する。 NLP
1973 DARPA(米国防総省高等研究計画局)がAIプロジェクトへの資金提供を縮小。これにより、AI研究の停滞が始まり、「AIの冬」と呼ばれる時代に突入。 CV & NLP
1976 デビッド・マールが「視覚における計算理論」を提唱。視覚処理を階層的なプロセスとしてモデル化する理論で、これがCV研究の基礎理論となる。 CV
1979 ハンス・モラベックが初期のモバイルロボット(モラベックのパラドックスに関連する理論)を開発。ロボットの視覚処理と自然言語指示を組み合わせたシステムが研究される。 CV & NLP
1980年代 - 第2次AIブーム
1980 エキスパートシステム「XCON」がデジタル機器の構成問題を解決するために導入される。ルールベースの推論を活用し、エキスパートシステムの商業利用が進む。 NLP
1982 ジェフリー・ヒントンがニューラルネットワークを再発見し、バックプロパゲーション(誤差逆伝播)アルゴリズムを提唱。ニューラルネットの学習が可能になり、パターン認識に応用され始める。 CV & NLP
1984 「SEE(ソニーエキスパートシステム)」の開発が進み、医療や産業界でのエキスパートシステムの実用化が始まる。 NLP
1986 ジェフリー・ヒントン、デビッド・ルメルハート、ロナルド・ウィリアムズによって、バックプロパゲーションアルゴリズムの詳細が発表され、ニューラルネットワークのトレーニングが効率的に行われるようになる。 CV & NLP
1987 日本で「第5世代コンピュータプロジェクト」が開始。人工知能を活用したコンピュータシステムの開発が目指され、論理型プログラミング(Prolog)が強調されるが、期待に届かず停滞に終わる。 NLP
1988 初期の自然言語処理システム「WordNet」がジョージ・ミラーにより開発。単語間の関係性を階層的に整理し、言語理解に重要なリソースとなる。 NLP
1989 ヤン・ルカンが畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を提唱し、手書き数字認識に応用。これによりCV分野の画像認識技術が急速に進展し、精度向上が実現。 CV
1990 初期の「形態素解析システム」が日本で開発され、日本語の文法構造を解析するための技術が進展。自然言語処理の商業利用が進む。 NLP
1992 カルマンフィルタがコンピュータビジョンに応用され、動的なオブジェクト追跡技術が進化。これにより、監視や顔認識などにおける応用が進展する。 CV
1993 機械翻訳システムが商業利用され始める。ルールベースから統計的翻訳手法へ移行し、より自然な翻訳が可能に。特に日本語と英語間の翻訳が進展。 NLP
1994 「Bag of Words」モデルが登場。文書を単語の出現頻度に基づいてモデル化する手法で、テキスト分類や情報検索の基礎となる技術が確立。 NLP
1995 サポートベクターマシン(SVM)がCVとNLPのタスクに導入され、特に画像分類やテキスト分類において高い精度を達成。 CV & NLP
1996 Deep Blueがチェスの世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフに勝利。これはAIが大規模計算とパターン認識を利用して人間の知能に挑む大きな成功となる。 NLP
1997 Microsoftが「MSRParsers」を開発し、文章解析や自然言語理解の精度が向上。 NLP
1998 レオ・ブレイマンが「ランダムフォレスト」アルゴリズムを提唱し、CVやNLPにおける分類精度が向上。 CV & NLP
1999 ベイジアンネットワークが登場し、CVやNLPにおける確率的推論の重要性が強調される。音声認識、視覚認識などの分野での応用が広がる。 CV & NLP
2000 最初の「顔検出技術」が実用化され、監視やセキュリティ分野におけるAIの応用が進展。 CV
2001 エキスパートシステムの限界が明確になり、第2次「AIの冬」が到来。資金削減と技術的停滞により、AI研究は再び低迷する。 CV & NLP
2000年代〜現在 - 第3次AIブーム
2006 ジェフリー・ヒントンが「ディープラーニング」を提唱し、層の深いニューラルネットワークの利用が本格化。ディープラーニングがAI分野で再び注目される。 CV & NLP
2009 Imagenetデータセットが公開され、CV分野における画像認識のトレーニングに広く利用され始める。これにより、ディープラーニングを活用した画像分類が急速に進展。 CV
2011 Appleが「Siri」を発表。音声認識と自然言語処理技術を活用したAIアシスタントが商業利用され始める。 NLP
2012 AlexNet(畳み込みニューラルネットワーク)がImageNetコンテストで優勝し、画像認識におけるCVの性能が飛躍的に向上。これによりディープラーニングのCV分野での有効性が証明される。 CV
2013 Word2VecがGoogleによって提案され、単語の意味をベクトル表現にすることでNLPにおける単語間の関係を捉える手法が確立される。文脈理解が大幅に進展。 NLP
2014 ジェフリー・ヒントンが「ディープ・ビリーフ・ネットワーク」を提唱し、ニューラルネットワークを通じた無監督学習が注目される。ディープラーニングの応用範囲が拡大。 CV & NLP
2014 Generative Adversarial Networks(GANs、生成的敵対ネットワーク)が登場し、AIが新しいデータを生成できる技術が確立される。これにより画像生成や合成データの作成が進展。 CV
2015 Googleが「TensorFlow」を公開し、ディープラーニングの実装が広く普及。NLPやCVの分野でさまざまなプロジェクトがこのフレームワークを利用して発展。 CV & NLP
2016 AlphaGoが囲碁の世界チャンピオン、李世乭(イ・セドル)に勝利。強化学習の技術がゲームAIにおいて画期的な成果を達成し、NLPとCVの領域にも影響を与える。 CV & NLP
2017 GoogleがTransformerモデルを発表。これはNLPにおける大規模な文脈理解のブレークスルーをもたらし、後のBERTやGPTなどのモデルに基づく手法の基盤となる。 NLP
2018 BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)がGoogleによって発表され、NLPの精度が大幅に向上。多様な自然言語タスクにおける文脈理解が進化。 NLP
2019 OpenAIがGPT-2(Generative Pre-trained Transformer 2)を発表。大規模な自然言語生成モデルとして、文章生成や会話モデルに応用される。 NLP
2020 GPT-3がOpenAIによって発表され、より高度な自然言語生成と理解が可能に。大規模な文脈理解が可能になり、チャットボットや文章生成アプリケーションが進展。 NLP
2020 DALL·EがOpenAIによって発表され、テキストから画像を生成する技術が確立される。CVとNLPの融合が進展し、AIによるクリエイティブな生成技術が大きく向上。 CV & NLP
2021 OpenAIが「CLIP」を発表。これにより、テキストと画像の関係性を理解するためのCVとNLPの融合技術が進み、マルチモーダルAIが本格化。 CV & NLP
2022 Stable DiffusionやDALL·E 2が登場し、テキストからの高品質な画像生成が可能に。クリエイティブ産業でのAIの応用が急速に拡大。 CV
2022 ChatGPTがOpenAIによってリリースされ、対話型AIの自然言語理解と生成の能力が広く普及。商業利用や教育、コンテンツ生成の分野で多くの応用が進む。 NLP
2023 GPT-4がリリースされ、さらに高精度な自然言語処理とマルチモーダル対応が進展。視覚的理解や複雑な文脈処理が可能になり、AI技術が幅広い分野で進化。 CV & NLP

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